不登校・引きこもりからの大学進学塾

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不登校・引きこもりを対象とした塾の種類

 不登校・引きこもりから大学進学を目指す事例は、既に一般的なものとなりつつあります。しかし、自分の進路希望先と合わない塾へ進んでしまうと、後々後悔することに。決して少なくない資金を投入するのですから、適切な塾選びが求められます。

 大筋ですが、不登校・引きこもり経験者を対象とした塾には、以下のような3通りの分類があります。

1:平易な・学習進学を目的とした「補習塾」

費用:月額3万円前後 講師:特に学歴は求めない

◆概要◆

 「補習塾」は、元々勉強が苦手な子、高度な学習は求めていない子、易しめな大学への進学を検討している子達がそのターゲットとなっており、学習速度もゆっくりで内容も易しく、講師の側での指導も緩い傾向にあります。また、特段高度な学力が必要とされているわけではないため、学力向上よりも、遊びや対話を優先しているケースが主流です。教育学部や福祉系学部の大学生がボランティアで参加していることも多く、一般的に授業費用は低廉です。

◆ターゲット像◆

 「とりあえず勉強嫌いを無くしたい」「勉強よりも、人付き合いを何とかしたい」「話し相手が欲しい」などのニーズに合致します。最終的に高学歴化を希望している場合でも、「人慣れ」という観点からすれば、最初のステップアップとしては有効です。

◆メリット・デメリット◆

 概してスタッフは優しい人が多く、生徒側に問題があっても、多少のトラブルは許容されます。塾というよりは「不登校・引きこもりの居場所作り」が主眼となっており、歴史的経緯も同系統である場合が珍しくありません。そのため、「対人関係構築の練習ついでに、勉強も少し」という場合には丁度良いでしょう。

 一方、スタッフの学力水準が高くない傾向にあるため、元々教育水準の高い進学校にいた子達や保護者の方からは「物足りない」「指導内容が間違っていた」「先生の能力面が不安」などの意見が散発的に発生します。高校認定レベルを一つの目安とし、それ以上の学力が必要な場合には検討外となるでしょう。

「補習塾」タイプの塾は、不登校・引きこもり支援の入り口としてその総数も最も多く、極度な過疎地でなければ、大体どの市区町村にも類似したものが一つは存在します。ただ、在籍しても明白な成長が見えないため定着が悪く、採算の悪化に伴い閉鎖を余儀なくされる塾が大多数です。公的機関による運営でない限り、長期の在籍は基本的に難しいものと認識しましょう。

2:大手予備校等が関与する「大規模塾」

費用:月額10~15万円前後 講師:中(相談員)~高(講師)

◆概要◆

 全国展開を行う大手予備校や塾内部で設立された不登校部門が、この「大規模塾」です。各都道府県の県庁所在地に設立されていることが多く、指導講師も所属学生も多数になる傾向があります。学習をメインに活動し、全体的に見て「普通の塾や学校」に近いと言えます。

◆ターゲット像◆

 小~中学からの不登校生も想定しているため、ターゲットは多岐にわたります。算数レベルで危ない子から東大進学希望者まで、文系学部から理系学部まで、短期在籍から長期在籍まで、広域への指導が可能です。また、経営規模が大きいことから教科カバー範囲も広く、多少の学習漏れが発生していても、補習のためのクラスで挽回が出来ます。高度な学力を有する学生さんは、そのまま一般生向けのクラスに編入出来、不登校から大学へのスムーズなスライドを念頭に運営されています。

◆メリット・デメリット◆

 元々教育部門からスタートしており、プラットフォームも通常の予備校と共有している場合が多いため、進学に関する情報や自習室他設備面での環境は上々です。専修学校として登録されている場合には、他の2通りと異なり、通学定期の発行が可能です。人間関係で特に大きなトラブルがなく、何となく不登校になってしまったケース等、比較的軽微な事例では特にパフォーマンス良く進学出来ます。講師陣の選抜も他2者よりも厳しく行われており、経験も豊富な点が強みです。

 一方、規模の大きさは人間関係の希薄さを生み、同時に集団生活のバランス感覚が要求されます。人間関係が苦手でドロップアウトした場合等、人間関係上のトラブルが最大の懸案となっている事例においては、「大規模塾」への進学はほぼ意味がありません。「行ってはみたけど、すぐ止めた」という事例が最も多いのは「大規模塾」特有の現象ですが、これは、参加者個々人が感じる人間関係における距離感上の問題故です。

 また、不登校生を普通の学生に対する二軍扱いしている塾の場合、所謂有名講師からの指導は期待出来ません。この辺は塾の運営姿勢によりますので、どのような講師から教わるのか、事前にチェックする必要があります。

 以上のように、「大規模塾」においては、良くも悪しくも「普通の学生」に近付けることを目標としましょう。

3:特定の分野に特化した「専門塾」

費用:月額10~15万円前後 講師:全体的に高学歴

◆概要◆

 「医学部」や「薬学部」「獣医学部」「看護学部」等、大学の卒後を念頭に入れ、就職までをパッケージ化して指導しているのが「専門塾」です。一般に、国家資格の取得を前提とした学部に特化していることが多く、少人数制で同様の進路希望者がまとまっている傾向にあります。

◆ターゲット像◆

 主に進学実績の良い有名進学校から不登校になったり、先天的に認知能力の優れている子が集まりやすく、最終的に理系専門職に就くことが目標となっているケースが主流です。平均的な知能があれば、基本的に困ることはありませんが、勉強嫌いな子や、LD等を抱えた場合は継続が困難になることがあります。

◆メリット・デメリット◆

 進路先が専門職に寄っているため、進学=就職となる進学形式が多数派で、学業と仕事とのリンクがはっきりしている点が大きなメリットです。上記2通りの塾と比較すると年齢要件が緩く、30前後までは比較的容易に受入れられるため、年齢的ハンデが少ないのも特徴でしょう。再就職もしやすく、人生の長期間にわたって効果が持続します。

 また、基本的に運営サイズが小さく、講師学生間の距離が近いため、ドロップアウト率が低い点もメリットと言えます。「補習塾」のメリットと「大規模塾」のメリットを同時に併せ持ったものが「専門塾」と言えます。

 一方、有効性の高い学部はほぼ理数系が中心で、文系学部で対応しているのは法学部位しかありません。そのため、先天的に数理関係が嫌いな子には事実上門戸が開かれておらず、メリットを享受出来る範囲が狭い点が、最大の問題と言えます。

 現実的判断としては、

「勉強苦手・人付き合いから・優しい環境・低価格」→補習塾へ

「学校戻りたい・勉強したい・大学で再スタート」→大規模塾へ

「専門職・人付き合いから・進学校の雰囲気」→専門塾へ

という流れで行けば、大体間違いはないでしょう。

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