不登校・引きこもりからの大学進学塾

不登校・引きこもりコラム

引きこもりから抜けるときの失敗について

  • 投稿日:2017年02月14日

 

「コンビ二のバイトでも、ガンガン落ちるんですが……」

 

とある相談事例

 


よくある失敗例

知り合いの支援関係者や親御さん、元当事者などから、しばしば周囲の引きこもり事例についてのお話を紹介されることがあるのですが、五年もすると、その総数もかなりのものになります。その中でも、「真面目に引きこもり止めようと思って頑張ってみたのだけど、結局また元に戻ってしまいました……」のような話は案外多いようです。同じミステイクをしないように、今回は逆戻りへの対策を考えてみましょう。尚、ここでの事例は、よくある事例をまとめたもの(半フィクション)です。

事例1:「接客バイトで大失敗」

ある日の深夜、突発的に将来への不安を感じた20代前半のaさんは、3年に及ぶ引きこもり生活を止めて仕事をしようと、ネットで見つけた求人先に面接の依頼を行った。引きこもりを止めるには人間関係の改善が必須だと感じた彼は、小規模飲食店でのホールスタッフを希望した。面接では思うように声が出ず、三年間のブランクの大きさを痛感したが、高校は卒業していたこと、まだ年齢が若かったことが幸いして、無事に採用されるに至った。

しかし、活動初日、職場で働く同僚(主に20代の男女)に対してほとんどまともに声をかけることが出来ず、指示への対応も緊張のあまり何も出来ず、挙句の果てに料理を床にぶちまけるなどの失態を繰り返したため、主任から時間前に退勤するよう薦められる。その二日後に再度出勤する予定だったが、憔悴のあまり無断欠勤をし、職場からの連絡と思われる電話にも応対せず、数日後、母親を介して退職依頼がなされた。

職場の上司は必ずしも高圧的な人物ではなく、寧ろ温和な職場環境だったが、同僚に対する気後れ、特に同年代の女性スタッフへの対応方法の欠如が、彼の不安を加速させた。更には、配膳途中の料理をぶちまけた際に聞こえたという「溜息」が、それをより大きくさせた。「自分は絶対に悪口を言われているに違いない」そう考えた彼は、社会へ出ることを止め、再び部屋にこもることとなった。

「アルバイトのレベル設定は段階的に上げること」

一般的な話ですが、

引きこもりを止めてから始めるアルバイトは、初期は簡単なもの(倉庫作業や工場作業等の作業的なもの)にして、慣れてきたらある程度コミュニケーションが必要となる仕事(スーパーの品だしなど)にスライドすると良いです。
基本的に飲食系のバイトは後半の方に回すのが無難でしょう。ただ、
5年以上引きこもっていると、予想以上に体力が衰えていたり、対人関係の支障が大きくなっていることが多いので、アルバイトをする前に体力確認等をしておいた方が間違いがありません。
具体的には外に出られる時間帯に少し走ってみることでしょうか。かなり早い段階で息切れがしたり、翌日の筋肉痛が酷いような場合は、継続的に運動をして、体力が戻ってから仕事に移ることをお薦めします。

引きこもりから来る危機意識のためか、突発的に何かを始めたがる人もいますが、大体その後が続かなくなっているので、少しずつ慣らす癖はつけた方が良いです。

急な変化を促すようなことはくれぐれもしないようにして下さい。無意味に体を壊したり、落ち込んだりする例は少なくありません。

また、折からの不況の影響か、引きこもりも長期に及び過ぎる(何もしないまま30歳を突破するなど。)と、そもそも面接の場すら提供して貰えなくなるケースが最近はよくあります。

基本的に30代も半ばを過ぎると、引きこもり改善の初動活動の機会すら消滅してしまいますので、極力早いうちに行動することが肝要です。

事例2:「周囲の嘲笑が気になって仕方ない」

引きこもり改善は「ゆっくりと、少しずつ」が原則だ、とアドバイスされたbさんは、取り合えず近所を散歩してみることにした。昼間出るのは気が引けたので、最初は深夜に家を出ることから開始した。段階的に活動時間を増やし、自信をつけたbさんは、今度は昼間の外出に挑戦しようと試みた。幸い、繰り返し訓練していたため、日中の行動でも思っていたより苦労は無かった。

しかし、ある日、昔よく会っていた近所のおばあさんから「こんにちは。お久しぶり」と軽く挨拶をされた瞬間、何とも言われぬ恐怖感に身が強張り、「あ……あ……」と呻き声を発した後、返事をすることもなく、逃げるようにその場を立ち去ってしまう。その後、誰とも分からぬ周囲からいつも嘲笑されているような不安が始終彼を苛み、その後は夜間の外出すら困難となった。

数秒間だけだったが、おばあさんと目が合い、そのときの相手の不思議そうな顔が、特に彼の意識に残った。目が合ったとき、顔と首が硬直し、目を逸らそうと首を回したいが回らないという状況に陥った。「カクカクと小刻みに動く首に、明らかな異常性を感じた」と彼は後に語った。その後、日々の生活においても「自分は人にどう思われているのだろうか?」そのような疑問がとめどなく発生し、彼の単純な行動すら阻害することとなった。

「それは引きこもり当事者にはよくある話です」

医師が関与すべきレベルの精神疾患でないことが条件での話ですが、

引きこもっていると発生するこの手の現象群は個別に対応して上手く行くことはほとんど無いです。

「私は対人恐怖」「俺は視線恐怖」など、個々の現象を細切れにして、それぞれに対策を立てようと腐心する人達は結構いますが、結果的に上手くいっている話はあまり聞きません。この対処は、因果関係を完全に取り違えていると言えます。 彼等の言い分は「自分は他人から笑われているから、引きこもりから抜けられないのだ……」のようなものが多く、ここでは「笑われていると感じる」ことが原因で「引きこもる」ことが結果となっています。


しかし実際はその逆で、「引きこもっている」ことが原因で、「笑われていると感じる」が結果です。
(「引きこもり」という存在は社会的には「恥さらし」のように受け止められていますから、「笑われている」と考えても不自然はないでしょう。)つまり、これらの現象群を個別に対処しようとするのは、既に出てしまった結果をいじくっているのと同じことです。 問題を解決するときは、その原因を変えることが最も効果的なのははっきりしていますが、その逆の行為をして問題が解決することはまずありません。
あくまでも、これらの現象群は結果論として現れているものであって、現象群自体が何かの原因ではないのです。

また、引きこもり当事者が訴えることの多い「周囲からの漠然とした嘲笑」は、主に彼らの社会における立ち位置が不安定であることが原因です。
そのため、立ち位置が安定してくる(進学して「学生となる」、仕事に就いて「社会人となる」のようなこと。)と、段階的にその種の「嘲笑」は消滅します。「嘲笑」が発生する原因は、当事者自身が、自らの今の社会定義(即ち「引きこもり状態にいる」ということ)を「恥じている」ことにあるのですから、その「恥」が消滅すれば、「嘲笑」も消えていくようです。

この手の問題を解決している人達は、この因果関係を正しく認識しています。そのため、原因である「引きこもっていること」の方を何とかしようとします。引きこもりから抜けてしまうと、すぐに全てがなくなる訳ではありませんが、段階的に少しずつこの手の現象群は無くなっていきます。

目標の設定を間違えさえしなければ、問題は案外簡単に解決します。既に引きこもりを抜けてしまった人々の方法を応用してみると、意外と明るい未来が待っているような気がします。

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