不登校・引きこもりからの大学進学塾

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不登校・引きこもり雑感20 ~上がる不登校と下がる不登校~

コロナ以降顕著になっている不登校格差に関する寸感です。

 来年度使用(一部は今年度から使用)の教材が次々に届いていますが、何だか今回の改訂は要求度上がりましたね。昔は、ゆとりだ何だという時代もありましたが、今はどう見ても真逆の流れで、今後も加速しそうな勢いです。

 特に気になったのが英語の文法。以前は高校1年の範囲だったものが中2に降りてきて、最悪中3でカバーしないとアウト。知識関係も、ざっと見ただけで2.5倍になっていますから、指導現場も本格的に変わってくると思います。数学も純増で、理科は難化傾向が続いている上、新科目「情報」も入ってきます。上下格差が更に開くことは、ほぼ間違い無いでしょう。

 しかし、現在完了進行形は、元々現在完了理解していればさして問題無いので、中学2年でも構わんと思うのですが、使役動詞・知覚動詞や間接疑問を中学2年に入れるのは、標準的な進学校ではちょっとキツいのではないかな? 鉄緑が当たり前の御三家とかなら、特に何でも良いでしょうが。

 経験則ですが、使役と知覚はゴッチャ(原型不定詞・現在分詞・過去分詞の分類)になりやすく、これは、大学時代にアメリカ人の教授が「てめえら日本人は、何で使役と知覚混ぜてんだゴルアア! 別モンだろクソがああ!」とブチ切れてた位ですから、かなり根の深い問題な気がします。自分は「当たり」の先生から教わったので困ったことは無いのですが、確かに教科書見ると、混じって当然みたいな構成になっています。また、間接疑問は、名詞節の概念がいい加減だと、かなり明後日な英作文になります。

 授業のときは「絶対に知覚と使役は混ぜんなよゴルアア!」「名詞節は絶対に憶えろよブルルアアア!」と説明しており、CARPE的には特に問題になってないものの、結局アレは文型の認識が固まってないとアバウトになりやすいですね。特に現在分詞と過去分詞については、OC間のSV関係とOV(S)関係が取れてないと、只の暗記ゲーになって、後で本当に苦労します。中3でもう一度学習する仕様のようですが、進学校の現場はちょっと混乱しそう。

 中3も、高校1~2年の範囲がこれまで以上に降りてきていることから、上位校の子達は、中3の15歳でも共通テストは大筋問題無く読めるようになる気がします。ざっくり3年早い計算ですか。優秀よね。

 それにしても、不登校だと、通信とか定時制が標準的な選択肢になってますが、本当に気をつけた方が良いですよ。特に、有名進学校から不登校になった場合は、とりあえず塾なり予備校なりで学力確保して、元高校の同期と同じレベルの大学を維持して下さい。どこかでコラムにまとめますが、ここでの人生分岐は、後もずっと尾を引きます。

 一応、不登校や引きこもりは色々と対処されているように見えますが、大多数は相変わらず棄民扱いで、「不登校でも大丈夫」「通信制でも問題無い」なんてのは99%嘘です。他に選択肢が無いので、仕方なくそうなっているだけで、抜本的な解決にはなっていません。別に不登校を選んでも通信制を選んでも構いませんが、それでOKという話ではありません。自分の未来ですから、知識なり経験なり、足らない要素は随時回収するようにしましょう。

不登校・引きこもり雑感19

 以前もどこかで書いたかも知れませんが、CARPEには経営のアドバイザーがいまして。昔から仲の良い酒飲み友達おじさん(もうおじいさんか?)なのですが、彼はよく「貯金貯金」言います。貯金と言っても、現金や有価証券などの金融資産のことではありません。それもあるにはあるのですが、金融資産以外にも「人付き合い」や「経験」「時間」「読書」「思想」「経営指針」「立地」「広報」「被認知」等も貯金だと言います。

 最近は(と言うか、昔からですが)、特にこの広報と被認知について煩く言われていて、「君は、対外広報を本当に疎かにし過ぎだ。広報は貯金だよ? 広報を疎かにすると、貯金使い果たして破産するよ?」とか何とか。

 言いたいことは分からんでもないですし、私もそこまで馬鹿ではないのですが、何というか、「面倒面倒」でついつい後手後手に。自分としては、元々CARPEは3年で潰すつもりの会社(実際は20年近く続いてますが)で、今でも町の冴えない個人経営の喫茶店をやっている気分です。何も、この喫茶店を大会社にしたいという気も無く、そんな面倒なことする位なら、別の事業でやりたいというのが本音。要は、「今のままで良いから、のんびり続く緩い環境」が不登校・引きこもり支援的には好みなんですよね。皆もそれを望んでいるみたいですし。

 よって、広報なんて全く気が乗らんのです。別に、大勢に来て貰いたいわけでもないのに、何故広報なんてせんといかんのだ、という気持ちがムクムクと。

 ただ、お「子」も立派に独立して仕事を持ち、自分も今年で41歳。色々と頼れる卒業生も増えてきたし、この会社も、もう自分だけのものでもないという気持ちが最近は強くなってきました。となると、この喫茶店を何らかの形で継続するなら、自分の怠慢とワガママばかり振り回して、後進に迷惑かけるわけにもいかないのが実情。自分では若いつもりでいますが、実際は立派なおっさんですしねえ・・・・・・。

 というわけで、何か渋々そっち方面に押し出されつつあるのですが、まあ宿命みたいなものでしょうね。頑張ります。

不登校・引きこもり雑感18

 何故か、今年は大学(院)卒の子達から、就職関係の相談がひっきりなしにやってきます。普段から顔を見せている子達もさることながら、しばらくご無沙汰していた子達まで、どういうわけか次々と。

 大体が、近場のレストランか何かで食事をしながら話を聞くのですが、聞いてる限り、かなり良いところに就職しているようで、所謂大手企業が次々と。別段、大きいから良いというわけでもありませんが、大体誰でも知ってそうな東証プライム企業が延々と続けば、なかなかに大したものだと言わざるえません。

 コミュニケーションに長けた一部の例外を除き、基本CARPEでは文系進学は推奨しておらず、ほぼ全員が理系進学を選んでいます。これは卒後の就職先を考えての判断でしたが、彼等の状況を見る限り、あいかわらずこれは上手く機能しているようです。良かった良かった。

 大学受験までは私も多々サポート出来ますが、いつまでも助けてあげられるわけでもありませんし、寧ろ助けて貰うことの方が増えてきました。加齢と共に役割の変化が発生するのは自然なこと。お声がかかるのもありがたいことと考え、今は彼等の成功をただ祝うことにしましょう。

不登校・引きこもりと就職事情 ~就職出来ない人達に足らない要素~

就職出来ない元引きこもりの原因について解説します。

何がパンクだ パンクロッカー(Oi! Oi! Oi! Oi!)
何がフリーだ アルバイター(Oi! Oi! Oi! Oi! Oi! Oi!)
サラリーマンはえらいのさ 脱サラしてもえらいのさ
就職したことあるからさ オレら就職できねぇもんなあ!

宮藤官九郎「就職しやがれ!」

 脱ヒキ後、すぐに就職出来る元引きこもりがいる一方、一見、条件が揃っているようで、全く就職出来ない元引きこもりもいます。

参照:内閣府「第3章 困難を有する子供・若者やその家族の支援(第2節)」

就職に繋がる5つの要件

 CARPE・FIDEMは大学進学塾ですが、同時に不登校・引きこもり当事者に対する支援組織でもあります。そのため、脱不登校や脱引きこもりは当然のことながら、進学に加えた安定的な就業環境までをセットにして初めて、その業務が完了したものと考えています。とりわけ、就業までの環境整備には注意を払っており、過去20年近く、必要と思われる卒後サポートを無償で実施してきました。

 その結果から、脱ヒキ後の就業&永続化のためには、以下5つの要件

1:頭が良い(豊富な知識 回転速度 ユーモア)
2:体力がある(筋力 持久力 稼働時間)
3:特殊な技能がある(器用 画才 歌唱力 第二外国語 IT知識)
4:コネがある(親類縁者の事業 有名校の先輩後輩繋がり)
5:気合がある(教えを請うことに抵抗が無い 負けてもめげない 元気で声が大きい)

のうち最低一つを満たしている必要があることが判明していますが、今回はその各要素を順番に解説し、現不登校・引きこもり当事者への助力としたいと思います。

1:頭が良い(豊富な知識 回転速度 ユーモア)と就職に有利

 「頭が良い」とは、所謂「頭脳労働」に関与する場合の必須要件で、5要件の中では、所得水準・生活の安定度が相対的に高くなる傾向があります。以前掲載した、不登校 引きこもり の原因とその対処実例 ~共感は本当に必要なのか?~における「挫折したエリートA~C」や「稀代の詐欺師」「気まぐれな変人」「平均的な天才」がこれに該当します。

 CARRPE・FIDEMでの過去の事例における「豊富な知識」とは、医学部や薬学部・獣医学部等、専門職系の学部に進学し、そこで養成された知識を活かして就職する等のルートを指します。「進学校に在籍していた経歴がある」or「先天的に高いIQを保持している」子達には特に有効で、長年の検証によりルートが確立されていることから、最も安定度の高い選択肢と言えます。一方、経済的要件を中心として事実上の年齢制限があり、30歳以降でこの選択を取れるケースは極めて稀です。

 「回転速度」はやや抽象的ですが、経験則的には、「情報処理速度が速い」「要点の把握が迅速である」「新概念の習得効率が良い」がそれに該当します。スコア化しやすい「豊富な知識」ルートと異なり、就職に際しての既定ルートはありませんが、後述する「4:コネがある」とのセットで、経営側から一本釣りされるケースが度々見受けられます。ESでの一括採用とは異なりますので、大学等の学歴は問われないことが多いですが、大多数が御三家や新御三家、或いはそれと同等の中・高校在籍歴を持っています。CARPE・FIDEM内部においては、何故か大手広告代理店子会社からの採用事例が多い点が特徴です。

 「ユーモア」は、しばしば話術に長けた面白い人がそれに該当し、特段の学歴や経歴、知識が無くとも、その存在自体が組織の円滑化に不可欠であることから、積極的に採用される傾向にあります。ただ、不登校・引きこもり業界では滅多に発生しない存在であると同時に、天賦の才覚と思しき事例が中心であるため、狙って選択することは事実上不可能です。今のところ、営業職に就くケースが多く、人材紹介関連とIT関連企業が半々となっています。

2:体力がある(筋力 持久力 稼働時間)と就職に有利

 「筋力がある」「持久力がある」「稼働時間が長い」は、文字通りの意味で、平均よりも体力面で優れていることを指します。消防士や警察官への進路が比較的分かりやすい事例で、他にも建設業界や一部のインフラ整備、介護職がそれに該当します。

 1と比較すると採用の間口が広く、折からの人材不足も相まって、2023年段階では最も無理の無い選択肢となっています。一方、業界によっては、特有の体育会系意識が色濃く残っているため、不登校・引きこもり経験者との親和性に一定の疑義が生じます。人材不足の結果、職場環境が緩やかに変化することで、親和性の向上に繋がる可能性は高いですが、基本的には体育会系の意識でスタートした方が失敗は少ないようです。また、公務員や一部インフラ関係を除き、給与や社会保障、勤務条件等の待遇面で劣ることが多いため、その点は割り引いて考える必要があります。

 一般論として、不登校・引きこもり経験者における有望な選択肢の一つではありますが、CARPE・FIDEM内部では、公務員と建設関連企業が目立つものの、塾の性質からして総数は多くありません。

3:特殊な技能がある(器用 画才 歌唱力 第二外国語 IT知識)と就職に有利

 「手先が器用」「画才が高い」「歌唱力がある」は文字通りの才能で、普通科高校ではなく、工業・農業高校や芸術高校に進学するタイプに多いケースです。以前掲載した、不登校 引きこもり の原因とその対処実例 ~共感は本当に必要なのか?~における「寡黙な昭和のエンジニア」「歌って踊れるITエンジニア」がこれに該当します。

 1のような汎用性のある学力は有していないものの、職人芸や伝統工芸等では優れた才覚を発揮し、他にも美術系大学を経由して、デザイン・アート分野での就業が確認されています。また、両親の海外赴任・国際結婚その他が原因で、緩やかなマルチリンガル化(最近は「日・英・中」が主流。)が進んでいる場合には、そこが就職のきっかけとなるケースもあります。マイナーな知識を活用して、YouTubeその他で情報発信をする事例も最近は増えてきました。比較的安定度が高いのがIT系で、2023年段階では極めて少数ですが、大学を経由せずとも、自主学習のみで仕事を受注するフリーランスがそれに該当します。

 一方、良くも悪しくも当たり外れが大きく、経験則的には1には遠く及ばず、2以上の待遇を確保出来る事例も多くありません。一般的なサラリーマンの平均年収(450万前後)を超えれば大成功と見て良いでしょう。YouTubeその他の情報発信系は、あくまで小遣い稼ぎレベルのものが大半で、本業となるのは例外的存在です。

 現段階で、ある程度の安定性を確保しているのは、

CARPE→国公立美術系学部 → SONY 博報堂 教員
工業高校中退→CARPE→大手メーカー
CARPE→フリーランスITエンジニア

他数例に限られていますが、本人の特殊技能を根拠としている事例が多いため、再現性も高くありません。本人の性格や特技と一致している場合に限り有効となる選択肢です。

4:コネがある(親類縁者の事業 有名校の先輩後輩繋がり)と就職に有利

 一般的には否定的に評価されがちな縁故採用ですが、不登校・引きこもり経験者にとっては、これが大きな武器となることがあります。

 主な縁故採用は、「親類縁者」「出身校繋がり」「地元繋がり」の三パターンが中心ですが、不登校・引きこもり関連で地元繋がりの縁故が利用出来る事例はほぼ存在しません。結果的に、比率としては親類縁者が80%、一流有名校などの出身校繋がりが20%前後となります。

 親類縁者による縁故採用は、その所有している事業によって異なりますが、基本的にはほぼ全て自営業や中小企業での採用となり、農業・町工場・建設関連・飲食関連が中心で、稀に会計やIT関連が混じります。失業の可能性が低い点が長所ですが、零細企業が多いため、給与水準は低い傾向にあります。

 逆に、出身校繋がりの縁故採用は、有名校関係者の枠を利用することが多い点に加え、1の「頭の回転が良い」の条件と併用されているためか、待遇面でもかなり恵まれているケースが散見されます。1でもある通り、CARPE・FIDEMにおいては、大手広告代理店子会社からの採用が多く、現段階で最も上手く進んだのが、麻布高校&電通子会社の事例です。

5:気合がある(教えを請うことに抵抗が無い 負けてもめげない 元気で声が大きい)と就職に有利

 上記1~4の要素全てが無かったとしても、「教えを請うことに抵抗が無い」という謙虚な姿勢、「負けてもめげない」というタフさがあれば、社会復帰の可能性はあります。

 何歳であろうと、どのような経歴であろうと、配置転換や技術革新その他の事情により、学び直しが必要となる局面は確実に存在します。従って、生きていれば「素直に他者から教えを請い、失敗を恐れない」が標準的な姿勢となりますが、この基本を押さえていれば、誰かしら救ってくれる人は出てきます。傲岸不遜で脆弱なだけの人間に生きる術は存在しませんが、その逆を突き詰めると、意外なところで突破口が見えて来ます。

 尚、上記とは全く関係ありませんが、この「気合」要素で地味に有効なのが「元気で声が大きい」で、この点は決して馬鹿にしてはいけません。実際に社会に出てみると分かりますが、何もインテリ気取りの頭脳労働ばかりが仕事では無く、周囲を鼓舞したり、ただ元気にするだけでも評価される世界があります。「人間もまた野生動物の一種である」と考えれば、頭を一切使わずとも、「とりあえず元気で声を張れる」ことの重要性は理解されるでしょう。頭は二の次で良いのです。

 5の要素は、1~4の要素と複合的に利用するのが本来の姿ですが、最終手段としては妥当な位置にあります。まずはアルバイト程度でも構いませんので、「とりあえずの第一歩」を開始しましょう。

 

 以上が、CARPE・FIDEMにおける就業&永続化の主要要件です。経験則的には、1~4のどれか一つを持ち、追加で5を持ち合わせていれば、ほぼ問題無いことが分かっています。再現性の高低は項目毎に差がありますが、一つの参考にしてみて下さい。

全てを持ち合わせていない人は就職出来ないのか?

 尚、「1~5全てを持ち合わせていない場合はどうしたら良いのか?」という質問が稀に来ますが、回答は一つ。「他人の邪魔をすることなく、ひっそり生きましょう」です。

 自分の人生をどの程度ハンドリング出来るかは、基本的に個々人の才覚に依存します。何の才覚も無く、ただ社会に翻弄されるだけの生き方もあり得ますし、別段それが悪いわけでもありません。ただ、自分が上手く行かないからと言って、嫉妬や劣等感に狂って他人の妨害を企図するのは絶対に止めましょう。あなたにはあなたの人生があるように、他の人にも彼等なりの人生があります。大金持ちになる必要もありませんし、高い身分を得る必要もありません。ただ、「自分のことは自分で対処し、極力人様の世話にならないようにする」という気持ちが最も大切です。アルバイトでも何でも構いませんので、最低限自分の食い扶持は自分で稼ぎ、周囲の迷惑にならない程度の謙虚な生き方を心掛けて下さい。

 残念なことに、不登校・引きこもり業界には、人権と弱者救済を錦の御旗にして生活保護を称揚し、「働かなくて何が悪い」と嘯く人々が支援者側にも存在します。ただ、彼等の大半は時代遅れの共産党・旧社会党関係者で、その主張が彼等の利益になるから語っているだけのこと。実際の当事者の利益とは無関係です。社会保障が細る今後の日本で、「働かなくても生活保護で」が通用しないこと位、少し考えれば分かると思います。

 安い思想に流されることなく、自分の人生は自分で切り拓く力強さを持って下さい。自分で切り拓くことの楽しさを知れば、彼等の主張がいかに薄っぺらで陳腐なものか理解出来るでしょう。他人から施しを受け、その削減に怯えながら生活している自分の姿を想像してみて下さい。そこに人間らしい尊厳などありはしません。どんなに貧しく、出来ることが少なくとも、自分で自分を支えているというその事実こそが、人間としての尊厳の源泉となります。

 今は、自由度の高い豊かで面白い時代です。折角の人生です。この時代の面白さを全力で享受することを積極的にお薦めします。

不登校 引きこもり→医学部受験組が気をつけていること ~英語編1~

受験英語の成長がピタリと止まる原因について説明します。

A period of rapid social and economic change is bound to be accompanied by confusion and doubt about existing values, institutions, and practices.  The inability of people to find satisfaction in accepted modes of behavior causes widespread questioning and searching examination.

「社会や経済が急激に変化する時代では、必然的に既存の価値や制度、慣習に対する混乱や疑義が伴うものである。従前の然るべき行動様式を人々が甘受出来ないがために、疑惑は広がり、徹底的な検証が加えられることになる」

大阪大学の入試問題より

 どういうわけか、共通テストで120~150点前後までは進むものの、その後ピッタリと成長が止まり、どれほど努力し時間をかけても、成績が微動だにしないどころか、寧ろ低下を招く気の毒な子達が少なからず存在します。

近年の英語出題動向

 他の科目同様、英語も2021年度からセンター試験と入れ替わる形で共通テストがスタートしました。変更点は多々ありますが、ハイライトは以下の二点、即ち、

1:アクセント・文法・整序英作が廃止され、リーディングとリスニングのみに
2:リーディング:リスニング=1:1の配点比率に

と見て大筋問題無いでしょう。

 賛否はありますが、個人的にはこの変更は好ましいことだと考えています。アクセント問題については、兼ねてより指導側・学生側問わず批判の対象になっており、仮に東大理三受験生でも、コスパの観点からほぼ放置(運が良ければ満点、多少外しても196~198)になっていましたし、文法についても、一部に時代遅れの問題が出題されるなど、実情にそぐわない状況が続いていました。読解の総量を増やすと同時にリスニング比率も上昇し、学習スタンスがより実用的な方向にスライドしたのも、学生の社会人後の実用を見据えての設定と思われ、制作者側の誠意と熱意が読み取れます。

後になってから判明する英語力格差

 一方、時を同じくして「中堅層の学生が上位層に食い込めない」というトラブルが散見されるようになりました。かつては、「中堅国公立理工系やMARCHレベルが確保出来たので、ちょっと頑張って東大や東工大、医学部や早慶を狙ってみる」のような話は特に珍しくも無かったのですが、最近は少なからぬ受験生の間で、この2者間に目に見えない大きな壁が発生しています。特に、共通テストの英語が150前後を上限に全く動かなくなると同時に、2次試験でも上位層への階級上げが遅々として進まないケースが度々見られ、中堅層にとって大きな負担になっています。

 意外なことかも知れませんが、この変化を生み出した最大の原因を探ってみると、他ならぬ新形式の共通テストに行き着きます。一見すると、時代に即した好ましい変化をもたらしたかに見える共通テストですが、想定しなかった場所で想像以上の事態が発生している現状を鑑みるに、これはこれで何らかの問題を内包している可能性があります。

 一体、共通テストの何が問題だったのか? それを知るためには、まず英語の主要カテゴリと、各カテゴリ毎の上位層スコア格差について理解する必要があります。

英語試験の主なカテゴリと差のつくポイント

 一部の特殊な大学・学部を除き、現在の大学入試は、

1:英語の基本構造を学ぶ「英文法」(ほぼ差がつかない)
2:1の英文法を利用して、英語を日本語に翻訳する「英文和訳」(差がつく)
3:2の英文和訳を平易な長文にして読み進める「長文読解」(ほぼ差がつかない)
4:3の長文読解を音声認識で処理する「リスニング」(差がつく)
5:1の英文法を利用して、日本語やデータを英語に翻訳する「和文英訳(英作文)」(大きく差がつく)

の5形式に分類されます。( )の部分は、上位層に属する受験生間でのスコア格差を表しています。相互の関係性をもう少し細かくまとめると、大筋以下のようになります。

 図を見ると分かるように、1の「英文法」は全ての中核であり、そこから段階的に上位互換の形式を生み出しています。一般的な進学校の中学段階で英文法が優先されるのは、英文法が全ての形式のコアであり、この点が揺らぐと、後詰めの発展的形式が足場から瓦解するためです。

 次に、上位層の各カテゴリ毎のスコア格差を見てみましょう。決定的に差がつくのは5の「和文英訳」で、これは特に医学部受験では常識です。次が2の「英文和訳」、4の「リスニング」と続き、1の「英文法」と3の「読解」は、分量や存在感の割に格差は発生していません。ただ、これには上位層特有の事情があります。

英語上位層のスコア獲得状況

 平均的な理系上位層の学生は、基本的な文法事項を中学時代から手堅く学習しているため、標準的な英文法で差がつくことはありません。逆に、早慶の文系学部で出されるようなキワモノ系英文法は、学習上のコスパが悪いことから、わざわざ着手する子がおらず(数学の方が遙かに効率が良い)ほぼ全員が放棄するため、こちらも差がつきません。読解については、難易度が高くとも低くとも、上位層ではほぼ全員がそこそこ無理なく解釈し、大きく外すような箇所も乏しい(外すときは全員外す)ため、差がつきません。

 他方の英文和訳は、英文法や基本的な構文の知識を入れただけではダメで、名詞構文や無生物主語、倒置・省略の処理方法、そして何より「副詞(句・節等広義のもの全て含む)」という大きな山場を越えなくてはなりません。結果、どうしても添削の必要性が出てくるのですが、この添削の総数がスコアと大まかに比例するため、特に難易度が上がると少なからぬ程度で差が開きます。リスニングはまた別の理由があり、出題する大学としない大学とでバラツキがあることから、仮に医学部と言えど、早期から対策を行っている子と後手後手に回った子とでは必然的に差がつきます。

 そして最後の英作文。これは英文法の完全な上位互換で、中学1年から高校3年まで、基本的な文法はほぼ穴無く確保していることが大前提の上、指定型英作に自由英作、図表の読み取りにそれぞれの表現方法と、非常に幅広い対策が求められます。しかも、その上で記述が適切かチェックするための添削が必要となりますので、英文和訳以上の負担感があります。(無論、スペルミスも許されません。)結果的に、上位層でも決定的な差がつくことになります。

 つまり、上位層で差がつくのは、英文法を基盤とした「英文和訳」と「和文英訳」、読解系学習最終段階で、到達までに時間のかかる「リスニング」の3項目が中核であり、英文法で大きな穴のある学生には、最初から勝ちの目がありません。

共通テスト英語での実情

 一方、現在の共通テストで出題されている形式は、3の長文読解と4のリスニングのみで、1の英文法や2の英文和訳,5の和文英訳はそもそも最初から存在しないため、上記のような上位層格差は発生しにくくなっています。無論、3も4も1と2をベースとしており、全くの無知なら3も4もままならないのは事実ですので、3と4内部に1や2を内包し、直接問うことはせずとも、間接的に評価していると考えれば、特段無茶なこととも言えません。ただ、最低限「誤読」でない程度の読解が出来れば、厳密な学習は必要とされず、「何となく学習していても、何となく点になってしまう」設計になっているのは事実でしょう。

 しかしこの結果、大半の中堅層の学生は文法を軽んじるようになり、即席的な長文読解とリスニングに学習を傾斜させました。無論、この傾斜が後の絶望を生むとは、知る由もなく。

中学一年から発生する英語力の分岐

 簡単なサンプルを出してみましょう。以下の文章を読み、日本語に変換してみて下さい。内容は中学一年の問題で、特に難しいものはありません。

6:The train for Kyoto leaves Tokyo at noon.

 ここでのテーマは、形容詞として機能する前置詞句です。一般に、副詞として機能する前置詞句は、事細かに修飾ー被修飾関係を考える必要はなく、寧ろ下手に考え始めると、重要な形容詞→名詞の修飾関係が疎かになるため、私は推奨しないようにしています。(これは、副詞句・節を含む副詞全般に言えることですが。)

 正しい訳と文章の構成は、以下のようになります。(訳の順序は○番と記載しています。)

7:「京都行きのその電車は、正午に東京駅を出発します」

 形容詞と名詞は、前置にせよ後置にせよ、特殊なケースを除いて「形容詞(先)→名詞(後)」の訳順になります。その後は、Sに続き、文章の後方から順に訳すのが基本となります。余程おかしな構成で無い限り、この手順でほぼ無理の無い日本語が生成されます。

 一方、文法がぞんざいになっている学生に同じ質問をすると、大筋以下のような回答が来ます。

8:「その電車は正午に東京を出発して、京都に向かいます」

 この回答は、大意としては間違ってはいないのですが、恐らく形容詞→名詞の修飾が読み取れないまま、「Sの次は文章の後方から訳す」という中学生時代の流れをそのまま踏襲しているものと考えられます。そこそこ読解力がある子でも散見されるパターンですが、文型の概念があるだけ、まだ救いようがあります。

9:「その電車は京都に向かって、正午に東京を出発します」

 この回答も、大意としては間違っていないのですが、とりあえず主語は理解しているものの修飾関係が分からず、8と同様に前置詞のforを動詞っぽく繕って、何となくそれっぽい訳にしたパターンです。こちらも頻度が高めです。

10:「その電車は京都を出発して、東京へ正午に行きます」

 この回答は確実に0点で、そもそも事実関係からして合っていません。推察では、それぞれの単語を日本語にバラバラに変換し、想定されうる「あり得そうなシチュエーション」を頭で想起し、それらしい日本語にしたパターンですが、全く意味の無い最悪のタイプです。所謂「英語がダメな子」の大多数が、この形態を取っています。

手堅い英文法力の上位層と揺らぐ中堅層

 上記の例を踏まえた上での経験則ですが、東大や医学部、早慶他上位層の群に食い込む子達を見ていると、特殊な事例を除いてほぼ確実に7の回答を手堅く出して来て、8~10のパターンに陥るケースはまず見ません。恐らく、彼等は中学時代から基本的な文法の学習を反復しており、訳の定石が徹底的にすり込まれているため、定石ピッタリのケースでは他の訳など最初から浮かびようがないのでしょう。

 一方、地方国公立やMARCHレベルになると、8、9のケースが目に見えて増えてきます。大意としては間違って無いものの、定石の手順が疎かになっているため、スコア面で一段階劣勢になります。とりあえず意味が取れていれば問題無い共通テストでは表面化しませんが、厳密な英文和訳が求められる国公立の上位群に挑むようになると、途端に成績が下がり、地方国公立やMARCHレベルで頭打ちになります。

 尚、それ以下の群になると、10のケースが特に珍しくも無く、中学一年のレベルでさえ完全な誤読が混じり始めます。この群に転落している場合、一度中学生のレベルに立ち返り、基礎の反復練習を行った方が遙かに効果的です。

 今回の例は中学一年で学ぶシンプルで簡単な例ですが、似たような課題が全ての学年で雑多に発生し続けるため、最終的には途方も無い格差が生み出されます。

全ての努力が無に帰す、恐怖の「フィーリング英文読解」

 これまでの指導経験から、私はこの8~10を「フィーリング読解」(特に法則も手順も無く、何となく日本語の対訳をそれっぽく繋げて解釈している「お気持ちだけ」の読解)として、指導の際に強く戒めています。とりわけ10は最低の状態で、どれほど努力を続けても一向に成果が出ず、学習自体が無意味です。この状態を維持したままの学習なら、寧ろやらないで遊んでいた方がまだ有意義でしょう。

 話を戻しましょう。2021年度の共通テストから、この「フィーリング読解」にハマった結果、地方国公立・MARCHレベルで成長が止まり、その上に上がれなくなる子達が明白に増加しました。センター試験の時代では文法での問いかけが存在したため、最低限の文法意識も残っていたのですが、最近はそれが目に見えて減少し、酷いケースになると、指導側が「多読・速読」を理由に、雑な読みを積極的に推奨することがあるようで、結果、多少の修正で成長を取り戻せるはずのレベルの子達でも、驚くほど成果が出なくなりました。

 以下は、彼等に対してヒアリングを行った結果ですが、このトラップにかかるまでの経緯は至ってシンプルです。

11:共通テストは読解中心なので、中学段階での文法学習が疎かになり、「とりあえず意味が大体取れていればOK」が常態化する(この段階でかなりの誤読が混じる)
12:そこそこ勘の良い子は、それでも多少はスコアになるため、単語だけを学習し、それらしいフィーリング読解を続けたまま大学受験を迎える
13:しかし、フィーリングでも何とかなるのは地方国公立・MARCHレベルまでで、そこから先は厳密性が要求される点に気付く
14:一方、英文法の基礎学習をほぼやっていないため、補足での対処が出来ず、同時に共通ではそこそこのスコアが取れるため、学習方針の転換に前向きになれない
15:結果的に、上位層へ食い込むことは諦め、地方国公立・MARCHレベルで受験を迎える

 彼等の話を聞いていると、これは試験システムと指導側の都合に踊らされただけの気の毒な結果でしか無い現実に至るのですが、修正は容易ではありません。10のように、壊滅的に理解していないケースなら、まだ「本当に最初から徹底的に復習しましょう」と提案して再起も促しやすい(実際に必要な期間はせいぜい半年前後)のですが、8や9のタイプはなまじ理解が進んでいるが故に、「本当に最初から徹底的に復習しましょう」と言われても提案に乗る子は半数もいません。期間としては三ヶ月も必要無いのですが、これまでの中途半端な成功体験が、再生学習に二の足を踏ませるのです。

英語力要請の暫定的総括

 以上のように、上位層と中堅層は、文法学習に対する意識に決定的な差があります。前者は、試験システムがどうあれ、過去重要とされてきた項目を愚直に学び続けた一方、後者は表層的な試験システムの変更に付和雷同し、要諦を放棄してお手軽な成果に飛びついた。後者が前者に歯が立たないのは、言うまでも無いことでしょう。

 センター試験の時代は、文法学習のベースが最低限維持されていたため、そこを足掛かりにして、中堅層から上位層へのアップグレードが比較的容易でした。しかし、共通テスト以降、文法学習のベースは時代遅れの産物とされ、目先のスコアを追うがあまり、上位層に進む足掛かりを放棄する例が増えました。安易な放棄は、本来ならより高いポジションに立てる子達からその可能性を奪い、格差の固定化を助長するに至りましたが、恐らくこの傾向は今後も続くでしょう。

 不登校 引きこもり業界でも、長期化して破綻しているのは、大半が後者のような浅はかな発想に飛びついたケースです。大した才覚も無いにもかかわらず、他人からの助言を見下し、上っ面だけの利益に飛びついて死を早めた引きこもりは、特に珍しい存在でもありません。浅はかな思考は学習にも表れますし、長じては、その人生観にも繋がってきます。

 特異的な才覚を持ち合わせた天才は別にして、せいぜい凡百の秀才止まりを自認しているなら、偉大な先人の知恵を有効活用する以外に勝ちはあり得ません。システムがどう変化しようとも、歴史の試練に耐えた成果は、素直に吸収するのが利口というものですし、自分だけでなし得た評価など、所詮高が知れています。手遅れになる前に、謙虚な姿勢で基本に立ち返るようにしましょう。

 では、具体的にどのような形で学習の誤りを修正すれば良いのでしょうか? 次回は、それをテーマとし、停滞に悩む子達への一助としたいと思います。

参考:「不登校 引きこもり→医学部受験組が気をつけていること ~数学編~

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